帰り。
歌いながら運転していたときのこと。
右折して片側1車線の道に入った我輩。目の前、15〜20mほど先にはもう1台車がある。
あまり明るくない道であるから、バックミラーに映るパトランプがすぐ目に入った。
後方4,50mくらいだろうか。
まあ1車線であるから、そりゃ後方で、追ってくるような形でこちらに向かってくるのは至極当然である。
だがそれにしても…
ハッキリと目標がありそうな走り方だな?
ただ一本道をそのまま走ってるだけです、巡回です、といったものとは違う、それが分かる。なぜわかるのかと言われると言葉にできないし、もしかしたらビビりすぎて最悪の事態を想像しやすい状況だった、というだけかもしれんが。
そういう状況なので、我輩は、
嘘だろ…そんな速度出してたっけ…?歌ってるからよくわからん…。もしかしたら速度出てたかも…。
そんなことを思っていた。我輩の前を走っている車はそんなに速度が出ているわけでもないし、それらを込みにした上で、対象が己以外には考えられない。
そのうち、ぴったり背後に張り付いたパトカー。
嫌である。嫌すぎる。なんか無言の圧力を感じる。
我輩は気づいていない事にした。
そうだ、気づいていない。歌ってるし。知らない。
だが、バックミラー越しに見えてしまった。
確かに、パトカーが、我輩に気づけと言わんばかりに、ハイビームをチカッやったのを(パッシングっつうらしい。へぇ〜)。
ヒギィイイイイッ!!!
これ絶対我輩狙ってるッッッ!!!!
嫌!やめて!チカチカしないでッ!
流れ続ける音楽。だんだん変に冷静になってくる。
本当に止まって欲しかったらスピーカーでなんか言うだろ。言うはずだから、それまで気づいてないテイで運転続けよう。
とりあえずチラチラバックミラー見つつ、曲も止めず、パトカーを従え我輩はまっすぐ進み続けた。
アレ?なんか何も言ってこんな(´・ω・`)おかしいなぁ(´・ω・`)
いや待てよ…?
言ってるわ!なんか言ってるわ!曲の音デカすぎて聞こえてなかっただけだわ!
耳を澄ませばかすかに聞こえる、なんか言ってる声。何言ってるか全然わからんが、多分止まれとか言ってるんだろう。それ以外ないし。
だが聞こえないというのは偉大だ。おかげさまで恐怖心が徐々が薄れていった。
その代わりに…
だんだんと腹が立ってきた我輩。
本当にこいつらは!自分がエライと思いやがって!煽りだぞ!おい!それ煽り運転だぞ!チカチカチカチカして、んなぴったり張り付きやがって!どうせ暇してるんだろ!お前ら嫌いなんだよ!お前らのやり方が!つーかどこに停まれってんだよこんな細い道で!
とか、思ってないといえば嘘になる。
我輩は、気づいてないふりを貫いた。
貫き歌い続けた。どうせいずれ停まることになるのはわかっている。
だが、今この瞬間、とにかく警察をイラつかせたかった。警察に、何だコイツ全然停まんねーな…聞いてんのかよオイ!?みたいな気持ちになってもらい、焦れ焦れ戦を繰り広げたかった(世の警察官スマンな、我輩はお前らの9割は嫌いだ)。
そんな感じで、なんか言うパトカーと歌う我輩の、ピースフルな戦いは続いた。
少しして、停まるのにあまりにも適切な場所、なんかあったら停まってええよみたいな凹んでいるところ(非常駐車帯と言うらしい。へぇ〜)が、とうとう我輩の左手に現れてしまった。
もうさすがにここで停まるか…。
我輩の負けだ。降参だ。
さあ我輩を取り押さえるが良い!潔く認めてや――
:-D!?
「マジでクッソ邪魔だったわ」と言わんばかりの勢いで、我輩の横を勢いよく通り過ぎるパトカー。
そして…
我輩の前を運転していた一見速度制限守っているようにしか見えなかった車を停めた。
こうして我輩の、ただただ公務執行妨害ではなくお茶目な勘違いは幕を閉じた。
いやぁ、にしても…目の前の車はなんで我輩が足止めしてしまってる間に逃げなかったんだろうか。素朴な疑問である…。無自覚か?つか何で停められたん?実は右左折時の信号無視とかか?
本当に心臓に悪かったが、おかげで、マジで無意識に飛ばさないよう注意しようと思うに至った出来事であった。